貴樹の独り言

喜寿の気楽なお一人様生活のあれやこれやの記録です

バレンタインに万葉集の恋バナを。


2月14日はバレンタインディ。

 

なので、

日本が世界に誇る

歴史的文学の中の恋バナです。

 


日本最古の恋歌は「古事記」に書かれた

須佐之男命が櫛名田比売

送った短歌だそうです。

 


八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに

 ヤクモタツ イズモヤエガキ ツマゴミニ

 

 八重垣作る その八重垣を」

 


「雲が湧き出る出雲の国に、八重垣を作る。

妻を籠らす為の宮殿に、幾重もの垣根作る」

 


有名だけど、「ふ〜ん、なんだかなぁ?」

って感じですよね。

一応

話のネタになるかな?

と言う事でご参考までに。

 

 

ここから本題です。

古代の恋歌と言えば「万葉集

 

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746年から編纂された

万葉集には、1300年前の人々が謳った

長歌、短歌が収められていて、


恋の歌 (相聞歌といいます) は、

全体の約4割を占めています。

 

でも、

亡くなった大切な人に送った挽歌も

相聞歌とすれば、

もっとある事になります。

 

 

その中で一番有名な相聞歌は、

 


額田王  と  大海人皇子

(ヌカタノオオキミ)  (オオアマノミコ)

 


との間に交わされた恋歌です。

 


当時の状況を簡単に説明すると、

額田王は元々、

大海人皇子の夫人でした。

 


当時、多妻制度ですが

皇族出自以外の妻は夫人と言われていました。

 


二人の間には、

十市皇女と言う女の子がいましたが、

 


大海人皇子の兄、

天智天皇

(大化の改新で有名な中大兄皇子) が、

 


美しい額田王

弟から奪って夫人にしていました。

 


この辺りの

古代社会の倫理観は

現代の倫理観とは

根本的に違うので、

常識や批判は一旦置いといて

サラリと進んで行きましょう。

 


ある日、

歌会の行事があって

互いに歌を披露

交換することになりました。

 


その時に歌われた短歌が

万葉集で一番有名な相聞歌です。

 

 

 

先ず、額田王が先に歌います。

 


「茜さす 紫野行き標野行き

アカネサス ムラサキノユキ シメノユキ

 


御守は見ずや 君が袖ふる」

ノモリワミズヤ キミガソデフル

 


意味は

「紫草が生えている野を、

あちこち行かれているあなた、

見張りに見られませんか?そんなに私に

袖をお降りになって」

 


すると、大海人皇子は返歌を歌います。

 


「紫草の にほえる妹を憎くあらば

ムラサキノ ニオエルイモヲ ニククアラバ

 


人妻ゆえに われ恋めやも」

ヒトヅマユエニ ワレコイメヤモ

 


意味は

「紫草の色の様に美しい君が

憎いのであれば、

既に人妻である貴女に、なぜ私が

この様に恋などするものですか」

 

 

以前は子供まで成した元夫婦が、

これを

現夫である 天智天皇も参加している

公の場で互いに交わしたのです。

 


儀式的であったとしても、

天智天皇を挟んだ三角関係は、

凄いですよね。

 


この後、天智天皇が亡くなると、

大海人皇子壬申の乱を起こして、

天武天皇に即位するのですが、

お互いの思いが 

何らかの関係として

有ったのか?無かったのか?

 

歴史浪漫小説、少女漫画などに

何度も取り上げられたお話です。

 

 

万葉集の恋の歌をもう一首、


数ある相聞歌でも

個人的に好きな歌です。

 


「君が行く 道の長手を繰り畳ね

キミガイク ミチノナガテヲ クリタタネ


焼き滅ぼさむ 天の火もがも」

ヤキホロボサム アメノヒモガモ

 


意味は

「貴方の行く長い道を、

手繰り寄せて折り畳んで

焼き滅ぼしてしまう様な、

天の火があれば良いのに」

 


遠くに赴任する男を見送る女が、

男がこれから歩いて行く長い道を

手繰り寄せて、折り畳んで、

焼く為の火が欲しい〜と

言う激しい内容ですが、

 

歌ったのは、

狭野芽上娘子 (サノノチガミノオトメ)


女は神に仕える立場なので付いて行けない、

左遷になって地方へ行く男とは

生きて

二度と会えないと分かっている

永遠の別れの歌でもあります。

 

キツイ〜辛い!

でも、哀れで美しい!

古代の浪漫です。

 

 

この後、

平安時代古今和歌集になると、

恋歌は駆け引きの

ツールとして技巧的になっていき、

 

命懸けの恋歌は見当たらなくなります。

 


飛鳥奈良時代

万葉集の恋歌は、男女問わず

自分に正直で純粋で一途、


1300年経ても、

人間として生々しい心情が

我々の心にも響いてきます。

 

 

万葉集を参考に

バレンタインに何か一言、

例えば「我、恋めやも」なんて

添えてみるのも 良いかも?

 

あ〜っ 意味、解らないか!

残念!

 

 

お一人様は、毎年の「歌会はじめ」に

応募位はしてみたいのですが。